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住まいの文化論
構造と変容をさぐる

住まいの文化論 構造と変容をさぐる

著者 森隆男/td>
発売日 2012年7月25日
ISBN 978-4-903530-95-6
体裁 A5判・上製・308ページ・フルカラー
定価 本体6,500円+税

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内容

「住まい」をテーマにした本は、これまでも数多く出版されてきた。
その内容はほとんどが建築学の分野に属するといっても過言ではなく、ハードとしての住まいが中心である。
しかし、住まいは「住む」という基本的な行為の所産であり、人文科学の分野からも研究すべき点が多い。
住まいは「建物」だけが存在するのではない。
住まいと暮らしが一体になった「生きている住まい」――その魅力にとりつかれた著者30年の軌跡。
住まいの意味と社会のありかたを考える、ソフト面からの住文化論。
フィールドワークによる豊富な図版・写真。索引付。

目次

序論

住文化論をめざして
一 御仮屋の残る住まいの原型
二 「クチ−オク」の秩序
三 座敷・縁・雨垂れ落ち・庭にみられる緩衝空間と「結界」
四 都市の住まいにみる変容と住居観の動向

第一章 祭祀施設にみる住まいの原点
第一節 古代の御仮屋が残る春日若宮祭
一 御仮屋の形態および材料
二 御仮屋の造作に費やされたエネルギー
三 大宿所の儀礼と仮屋
四 御旅所と大宿所からみた祭祀形態
五 若宮祭と頭屋儀礼の共通点
第二節 諏訪大社上社の儀礼と御仮屋
一 神事組織と基礎資料
二 御頭祭と御仮屋
三 精進屋の原型としての御室
四 御射山祭と御仮屋
五 御仮屋からみた司祭者と祭祀形態
第三節 頭屋儀礼における御仮屋の諸相
一 春日若宮祭の影響を受けた御仮屋
二 閉鎖的な構造
三 床の有無からみた御仮屋の形態
四 仮設性
五 鎮守の森の延長
第四節 御仮屋に残る住まいの原感覚
一 御仮屋にみる閉鎖的な構造と土座
二 寝室としての機能
三 塗籠から納戸へ
四 霊的再生の場としての「室」
五 住まいの構造と寝室

第二章 住まいの秩序が反映した屋内神の祭場
第一節 「クチ-オク」の方位がつくりだす秩序
一 「オモテ-ウラ」と「カミ-シモ」
二 人生の節目に移動する寝室
三 住まいの最奥部ナンドがつくる「クチ-オク」の秩序
四 集落にも存在する「クチ-オク」の秩序
五 「クチ-オク」の秩序を分析の視点に
第二節 住まいの「オク」に祀られる家の神
一 井川地区の「居小屋」と荒神祭祀の空間的把握
二 祭祀の場の変容
三 木曽地方の荒神祭祀
四 屋内神としての荒神祭祀誕生の背景
五 住まいの「オク」に祀られる家の神
第三節 あいまいな秩序の部屋――「カミ」と「シモ」の間
一 次の間に祀る庚申
二 次の間に祀られた金毘羅神
三 次の間に付随する柔軟さ
四 住居空間の秩序からみた次の間の機能
五 人と神との関係によって決定される祭祀の場所
第四節 「オモテ」と「ウラ」
一 間取りと祭祀設備
二 祭祀設備の設置場所を決定する「オモテ-ウラ」の秩序
三 対馬のダイドコロとザシキ
四 家の神の性格をもつ仏壇の祖先
五 地域差の抽出に向けて

第三章 来訪神への対応
第一節 他界から聖地、そして住まいを訪れる神
一 神の来訪を記憶する「装置」
二 神の来訪を認識する「装置」
三 具現化された来訪神――宮城県加美町柳沢の「焼け八幡」
四 神と人が出会う場
第二節 ニワから座敷へ――奈良県平群町の頭屋儀礼を中心に
一 住まいで展開される儀礼とその場
二 頭屋儀礼の場
三 葬送儀礼の場
四 庭で展開される年中行事や通過儀礼
五 住まいにおける庭と座敷
第三節 縁と床の間――南西諸島の床の神
一 与論島および南西諸島の床の神祭祀
二 縁を祭祀の場とする沖永良部島の播種祭
三 床の間と縁の同質性
四 中柱と床の間
五 「床の間」の創出
第四節 結界――持仏堂から仏壇へ
一 住まいの概要――菊池義郎家を例に
二 近年まで残存してきた持仏堂
三 仏壇の導入
四 持仏堂と仏壇からみた八丈島の祖先祭祀

第四章 住まいの変容
第一節 都市の住まい
一 近代の都市住居史
二 事例の検討
三 都市住居の分析
四 間取りからみた暮らし
五 今後の研究課題
第二節 観光化のなかで暮らしを守る住まいを求めて
一 奈良町の歴史といま
二 伝統的商家に暮らしを守る住まいを求めて
三 観光客に多様なサービスを提供する施設
四 行政の対応
五 住民主体のまちづくり
第三節 沖縄の住まいと暮らし――「変容」の視点から
一 当山氏の住まいの概要
二 変容したもの
三 変容しないもの
四 神々とともに生きる暮らし
第四節 住まいの変容と伝統儀礼――沖縄県小浜島のヒンプン
一 小浜島における残存状況
二 沖縄本島における残存状況と材料の変容
三 ヒンプンの機能と残存した背景
四 住まいとそれをとりまく空間の秩序
五 ヒンプンが創出する景観

第五章 田園都市「千里山住宅地」から学ぶ今後の住まい
第一節 田園都市とは
一 ハワードが提唱した田園都市
二 日本での展開
三 田園調布
四 西洋風の街をめざして
第二節 千里山住宅地の誕生
一 関西における郊外住宅地の開発
二 開発の経過を伝える図面
三 開発の概要
四 開発当時の景観
五 暮らし
六 住まい
第三節 住まいと暮らしの「変容」
一 家族の動向と改築
二 近隣農村
三 中心と周縁に位置する部屋
四 伝統的生活の残存と変容
第四節 田園都市の夢と現実、その意義
一 景観の変容
二 神社の勧請、寺院の設置
三 田園都市としての発展を阻害したもの
四 学園都市への模索
五 文化遺産としての「田園都市」

著者

森隆男(もりたかお)
1951年、兵庫県生まれ。
関西大学大学院文学研究科修士課程修了。
(財)日本民家集落博物館学芸員、尼崎市教育委員会学芸員を経て関西大学文学部教授、博士(文学)。
著作に『住居空間の祭祀と儀礼』(岩田書院、日本民俗建築学会奨励賞)ほか。
著者等略歴は刊行当時のものです。